マチルダ視点
「マチルダ? どこにいるの? 出てきて」
私はこの二十分間流し続けていた涙を拭った。
フレドリックの声を聞いて、しっかりしなければと思う。
今夜どんなドラマが起ころうと、私は自分の役を演じなければならない。
ローザ夫人に弱い姿を見せるわけにはいかなかった。
「ああ、ここにいたのか! 本当に心配したんだ。どうしてこんなに時間がかかったんだ、マチルダ?」
私は顔を上げてフレドリックを見た。
彼が私を心配しているような表情を見せたのは初めてだった。
そして正直、その姿を見た瞬間、胸の奥に小さくて儚い温かさが灯った。
「ごめんなさい……。ただ、みなさんと接することに慣れていなくて、フレドリックさん」
「こんなことを言うなんて信じられないが、お前はあいつらの言葉なんか気にする必要はない」
彼はため息をついた。
「今日のお前は本当によくやっている。見違えるほど綺麗だ。あいつらの否定的な言葉なんて無視しろ。聞く価値もない。いいな?」
そして少し身を乗り出した。
「もう行けるか? まだ祖母や親族たちに挨拶しなきゃならない。あと一、二時間だけ頑張れ。分かったな?」
私は深呼吸をして頷いた